2023/04/25 13:46
「例えばの話なんだけどさ、ここに咲く花々は月と星の光そして“涙”がないと綺麗に咲かないだろ?」
『涙は涙でも悲しみや淋しさの“涙”ね』
「その悲しみや寂しさの涙じゃなくて嬉しくて幸せな涙を与えてもここにある花は綺麗に育つの?」
『多分育たないって事は無いと思うよ。だけどそれは僕たちのこの月と星の夜森には関係無い事だよ』
「まぁ、そうだよね。それに異なる感情が混ざるとまたあの時みたいに湖が荒れてしまうかもしれないしね」
『ボクたちは夜の静寂に細く聞こえる悲しい声を頼りそっと近づいてその淋しい声の主によりそって、その涙が枯れて少しでも元気になるまで一緒に過ごすのが仕事だよ』
「月や星が消え、夜が明けまた少しでも笑顔が取り戻せるまでの間ね。寄り添うだけで元気になるなんてそんな簡単じゃない事くらいキミだってわかってるだろ?」
『もちろん充分わかっているさ。キミが嬉しくて幸せな涙の事を突然持ち出すからついムキになっちゃったんだよ。そっと寄り添ってその涙を戴くのがボクたちの仕事。心が凍えそうな時は案外このフワフワの尻尾がホッとするみたいだからね』
「ボクらにはボクらにしか出来ない大切な仕事があるんだから。嬉しく幸せな涙は白昼森で花唄を奏でるあの子たちに任せておけばいいのさ。のんびりしてるように見えるけどきっとあの子たちにも大変な事は沢山あるんだよ」
『そうだね。ボクにしかできない事。暗くて静か、誰にも気付かれないかましれないけど大切な仕事だもんね。』
夜森のネコさんたちが話疲れた時、パチパチッと月が瞬きをしました。
「そろそろこの月も交換の時期だね」
『木馬の月星交換士さんに連絡しなくちゃ!』
ネコさんは電話をとって早速木馬の月星交換士さんに電話をかけました。